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顧客事例

分断された内部通報窓口を統合し、“従業員の声”を経営資源へと転換

世界に約28万人もの連結従業員を擁し、連結子会社約600社と多数のグループ会社を抱える巨大企業、株式会社 日立製作所。実効性のある内部通報制度を構築するため、2020年にNAVEX Whistleblowing & Incident Management solutionを本格導入し、「日立グローバルコンプライアンスホットライン」を確立しました。現在、国内外からの内部通報件数は年間約2,000件に達しており、グローバルガバナンスを支える中核インフラとして機能しています。


モダンなオフィスのガラス張りの廊下で、スーツを着たビジネスパーソンが並んで立っている様子。

日立製作所について

株式会社 日立製作所 

創業1910年。日本の産業の発展を支えてきた国内最大の総合電気メーカー。電気機器から情報システム、インフラシステムまで、幅広い分野で革新的な技術と製品を提供し続けており、サステナブルな社会を実現する社会イノベーション事業を推進している。 

コンプライアンス本部 コンプライアンス部 部長 

八巻 耕 氏 

「通報件数の増加は不正の兆候が増えたからではなく、組織が健全に機能し、従業員が安心して声を上げられるようになった証です」 

コンプライアンス本部 コンプライアンス部 部長代理 

小島 正浩 氏 

「各国の個人情報保護法や越境移転規制が厳格化する中で、グローバル一元管理のプラットフォームをいかに各国の法令に適合させ続けるかが今後の課題です」

対象業界

電気機器、多角化産業(IT、エネルギー、モビリティ等)

従業員数

連結従業員数: 282,743名

導入サービス

内部通報・インシデント管理、データ分析、規制コンプライアンス管理

主な課題: 

  • 日立本社が直接受領する内部通報件数が年間30件程度で停滞していた 
  • 子会社とグループ会社が個別に窓口を運用しており、本社でグローバル全体の通報状況を把握できず、重大な不正が握り潰されるリスクがあった 
  • 電話やメールによる一方向の匿名通報が多く、調査に支障が出ていた 
  • 厳格化する各国の法規制対応に苦慮しており、解決策を模索していた

主な成果: 

  • 外部ベンダー利用により通報への心理的障壁が低下、「声を上げる文化」の醸成に寄与 
  • 内部通報件数が年25%ずつ増加しており、現在およそ年2,000件に到達 
  • 本社で通報データを一元管理し、タイムリーな実情把握と迅速な調査対応が可能に
Five people sit around an oval table, working together with a laptop, papers, and pens in a modern office setting with orange chairs, viewed from above.
お客様課題

内部通報を一元管理できるシステムを導入し不正防止とガバナンスの強化を図る

かつて日立グループの内部通報制度は、その組織規模に見合う機能を発揮しきれていませんでした。コンプライアンス本部 コンプライアンス部 部長代理・小島 正浩 氏は、当時の状況をこう振り返ります。 

「日立本社で運営していた以前の通報窓口は、メールと電話を中心とした古典的な手法で運用されており、通報に対する心理的ハードルが極めて高い状況にありました。その結果、日立本社に届く通報は年間でわずか30件程度。28万人という母数を考えれば、不自然なほど少ないと言わざるを得ませんでした」 

さらに、子会社やグループ会社がそれぞれ独自の通報窓口を運用していたため、重要な不正の兆候が本社にタイムリーに共有されない構造があったと、コンプライアンス本部 コンプライアンス部 部長・八巻 耕 氏は指摘します。 

「仮にどこかの拠点で経営陣の関わる不正が生じても、内部で握りつぶされてしまうリスクが懸念されていました。競争法違反や贈収賄といったグループ全体にダメージを与える重大な不正は、初動の遅れが致命傷となるため、一刻も早く察知する必要があるのです」 

また、従来の匿名通報は双方向のやり取りが難しいため、事実確認や証拠の入手が進まず、調査が途中で頓挫してしまうケースも少なくありませんでした。つまり「声を上げた従業員の勇気が報われない構造」が存在していたのです。

A close-up of a construction worker holding a blue hard hat, wearing a yellow safety vest, with three other workers in safety gear blurred in the background on a construction site.
ソリューション

なぜNAVEXを選んだのか:世界水準のプラットフォームと、充実した受付体制

こうした状況を抜本的に変えるために、日立が選択したのが、 NAVEX Oneの「Whistleblowing & Incident Management solution」でした。 

「決め手となったのは、NAVEXが提供する圧倒的な多言語対応力と、24時間365日の受付体制です。日立が展開する世界中の拠点において、現地の従業員が母国語で、いつでも安心して声を上げられる環境を整備することが不可欠な要件でした」(小島氏) 

経営層が特に高く評価したのは、「一元管理によるスピードと網羅性」でした。 
「全拠点のデータを信頼度の高いプラットフォームに集約することで、グループ全体の状況を瞬時に俯瞰できるようになります。どの地域で、どのような傾向のトラブルが起きているのか。そうしたデータは迅速な経営判断を下すために必須のものです。導入コストよりも、コンプライアンスを蔑ろにすることで生じるブランド毀損や、巨額の制裁金といったリスクの方が遥かに重いと捉えられていました」(八巻氏) 

NAVEXが選ばれた理由は、対応範囲の広さだけではありません。13,000社以上の導入実績に裏打ちされた確かな信頼性に加え、通報受付から調査管理、データ分析に至るまで、一体で管理できる統合性も重要な判断材料となりました。 

「単なる受付ツールではなく、コンプライアンス活動全体を支える基盤として機能する点が評価の基準となりました」(八巻氏)

通報件数は年25%で増加。リスクの可視化と調査効率の向上

2020年4月、日立は世界約800社のグループ会社全体を対象に同システムの本格運用を開始しましたが、導入には巨大組織ゆえの困難も伴ったといいます。 

「長年、自前の窓口を運営してきたグループ各社からは、本社の窓口に情報が集約されることへの抵抗感もありました。そこで、システム導入のメリットについて丁寧に説明してご理解いただくとともに、最初の半年間はローカル窓口を存続させつつ、半年後に一本化するという段階的な戦略を採りました」(小島氏) 
 

導入効果は劇的なものでした。運用開始直後から通報件数は年25%程度のペースで順調に増加し続け、現在では年間約2,000件に達しています。 
 

「外部ベンダーの導入により通報の抵抗感が薄れたためか、導入初日から通報が届き、効果の高さを実感しました。通報件数の増加は、不祥事が増えたからではなく、これまで隠れていた声が届くようになった“健全化の証”です。実際に経営リスクを内包する重要な通報も届いており、不正防止に大きく寄与しています」(八巻氏)。 
 

また、匿名での双方向対話が可能になったことで、調査の質も大きく向上しました。 

「システムを利用することで、通報者は匿名性を維持したまま、調査担当者とチャット形式でやり取りができます。資料の提出も容易になり、調査のスピードと精度は飛躍的に高まりました」(小島氏) 

また、以前は各ビジネスユニットやグループ会社から届く通報件数を、半年に一度、膨大な時間をかけて手作業で集計していました。 「数値を出して報告するだけで精一杯だった」という状況は、NAVEX Oneの分析ツール「Custom Analytics & Benchmarking」の活用によって一変しました。最新の通報状況を即座に把握できるようになり、監査対応のスピードも向上しています。
 
「以前は困難だった“特定組織の通報一覧”の抽出も、今ではわずか1〜2分で完了します。地域やカテゴリーごとの絞り込みも自在で、特に監査担当メンバーから非常に喜ばれています。経営層へのレポートも、数分で精緻な最新データを提供できるようになり、より高度なガバナンス判断を支える基盤が整ったと感じています」(八巻氏)

Two construction workers in safety vests and hard hats stand facing a multi-story building under construction. One wears an orange vest, the other a yellow one. Scaffolding and part of a crane are visible in the background, under a clear sky.

「周知」と「信頼構築」を軸にした地道な啓発活動

もちろん、システムを導入しただけでは劇的な変化は望めません。日立のコンプライアンス部が注力しているのは、「周知」と「信頼性の向上」を柱とした地道かつ徹底的な取り組みです。 

「制度を形骸化させないためには、粘り強く周知し続けること。そして、受け取った通報に対しては真摯に調査を行い、結果をフィードバックすること。そのような誠実な対応の繰り返しの先にしか、組織への信頼は育まれません」(八巻氏) 

「周知」の面では、単なるポスターの掲示に留まらず、さまざまな施策を講じています。 
「毎年10月の“倫理月間”には、社長自らがビデオメッセージで、不正を許さない姿勢と窓口の存在を全世界に発信し、多言語の字幕を付けて発信しています。さらに、全社員対象のeラーニングや新任課長研修、QRコード付きのカード配布など、あらゆる機会を捉えて窓口の存在を周知しています」(八巻氏) 

さらに重要なのが「制度への信頼構築」だと、小島氏は強調します。 
「声を上げてももみ消される、あるいは報復を受けるといった不信感があれば、誰も通報しません。私たちは、調査の透明性を高めるために、原則90日以内に調査結果を出すという目標を掲げています。調査に時間がかかれば、通報者に不安を与えてしまいます。場合によっては、内部通報により解決を諦め、マスメディアなど外部に通報することを決断してしまうかもしれません」 

最近では、データの開示にも力を入れています。 

「調査データを公表することで、“会社が通報内容を深刻に受け止め、誠実に調査してくれる”というメッセージになります。年に一度実施している全従業員対象の意識調査では、“日立が通報に対して誠実に対応しているか”という設問に対し、年々肯定的な回答の割合が増えており、当部の活動が実を結んでいる証だと受け止めています」(小島氏)

A modern cityscape at dusk with futuristic buildings and a bridge with green-lit supports. The sky is a soft blue, and the buildings feature glass and patterned exteriors, reflecting urban architectural design.
新たな課題と将来の展望

厳格化する各国規制対応とAIの活用

グローバルで統一的な制度を運用する以上、各国の法規制への対応は避けて通れません。個人情報保護やデータ越境規制は年々複雑化しており、その難易度は上がり続けています。日立はこの課題に対し、NAVEXの「Regulatory Compliance Management」を導入し、法規制の最新状況をリアルタイムに管理する体制を強化しています。 

「たとえば、特定の国からの通報については、どの項目を匿名化すればデータ移転を許容されるのか。こうした細部への対応が、今後の運用では不可欠になるでしょう。新たに導入した「Regulatory Change Management」には、法令のアップデート通知に留まらず、“A国で新法が施行されたため、実務ではこう対応すべき”といった、具体的なアクションプランの提示までを期待しています」(小島氏) 

一方で、通報件数の増加に伴い、人的リソースの限界という課題も表面化しています。その打開策として検討されているのがAIの活用です。 

「通報者や調査対象者の心情に寄り添い、深い対話が求められる調査は、AIが代行できるものではありません。しかし、膨大なデータの分類や解釈といった、補助的な役割を担うことは可能でしょう。たとえば、年間2,000件の通報内容、あるいは従業員意識調査の膨大なフリーコメントを、人間がすべて精査するには限界があります。この作業にAIを導入することで、膨大なテキストからリスクの予兆を自動検知したり、感情分析を行ったりすることで、より高度な予測型のコンプライアンスを実現できればと期待しています」(八巻氏)

Aerial view of a cityscape at sunset, featuring a dense cluster of tall skyscrapers with modern and classic architectural styles. The sky is partly cloudy with pink and blue hues, and sunlight reflects off the buildings windows.

「より良い職場環境を作る」という強い信念に基づく、声を上げる文化の醸成

日立が成し遂げた変革は、システムの刷新だけではなく、“通報件数の増加を、組織の健全化の指標として捉える”という、コンプライアンスに関わる認識の転換でした。従業員の声を可視化し、データとして蓄積し、グループガバナンス向上に役立てる。その循環は、確実に経営基盤の強化に役立つものです。 

NAVEXに対しては、単なるベンダーではなく、世界のベストプラクティスを共有してくれる「戦略的パートナー」としての役割を求めており、今後も日立が目指すべき次なるグローバルスタンダードを提示してくれることを期待しています。

株式会社 日立製作所 コンプライアンス本部

コンプライアンスは複雑である必要はありません。

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