Skip to content.
お問い合わせ
A modern building with curved lines and layered balconies in the lower right corner. Red arrows radiate outward in various directions against a gradient beige and brown background.

日本のリスク・コンプライアンスに関する統計

日本 - 「リスク・コンプライアンスの実態」調査結果分析
対応言語​

概要

日本の公益通報者保護法が進化を続ける中、国内組織全体の倫理とコンプライアンス文化も変化しつつあります。本ホワイトペーパーは、2025年「リスク・コンプライアンス実態報告」調査における日本を拠点とする企業の回答データを特別に分析したもので、この「変化」が国内のリスク・コンプライアンスプログラムに与える影響を独自の視点で紹介します。

本資料が、日本のリスク&コンプライアンス(R&C)担当者様にとって、自組織の現状を同業他社と比較し、改善のヒントを得る一助となれば幸いです。

今回の調査における日本拠点の組織からのデータは、アジア太平洋地域(APAC)全体の調査データの大部分を占めています。したがって、本分析では、日本企業の回答データを、米国拠点の組織のデータ、およびグローバルの回答データと比較しています。

リスク・コンプライアンス実態調査の方法論

2025年調査は、NAVEXの依頼により、市場調査会社The Harris Pollがオンラインで実施しました。対象は、18歳以上の非学術分野の専門職(管理職/非管理職以上)で、リスクとコンプライアンスに関する知識を持つ999名の成人です。内訳は、米国(458名)、英国(123名)、フランス(119名)、ドイツ(107名)、日本(104名)、その他の国々(88名)となっています。調査期間は2025年4月23日から5月29日です。

生データは加重処理されておらず、したがって本調査に回答した個人の意見を反映するものとなっています。

本調査の回答者は、NAVEXの顧客または見込み顧客リストから(382名)、または当社の調査への参加に同意いただいた方々から(617名)選出されました。Harrisのオンライン世論調査のサンプリング精度は、ベイズ信用区間を用いて測定されています。本調査におけるサンプルデータは、95%信頼水準で±3.1%の精度を有しています。この信用区間は、調査対象となる母集団のサブグループにおいては、より広くなる可能性があります。

あらゆるサンプル調査や世論調査は、確率抽出の有無にかかわらず、カバレッジエラー、非回答による誤差、設問や選択肢の表現による誤差、調査後の加重処理や調整など、定量化が困難な複数の誤差要因の影響を受ける可能性があります。

主要な調査結果

日本の組織の半数が、高度な成熟度レベルにあると評価されている

2025年におけるプログラムの実態を把握するため、NAVEXは回答者に対し、倫理とコンプライアンス・イニシアチブ(ECI)が定める 倫理・コンプライアンスプログラム優秀性のためのフレームワーク基準に基づき、自組織のリスク・コンプライアンス(R&C)プログラムの成熟度を自己評価するよう依頼しました。この5段階評価は、最も成熟度が低い「開発の余地あり」から、「定義段階」「適応段階」「管理段階」を経て、最終的に「最適化段階」へと成熟度が進んでいきます。なお、このスケールには「終点」はなく、最も成熟したプログラムであっても、さらなる改善の余地が残っていることに留意すべきです。

日本拠点の組織の回答者の50%が、自社のR&Cプログラムが「管理段階」または「最適化段階」にあると回答しており、これはECIスケールにおける最も成熟した2段階に該当します。一方で、「定義段階」または「開発の余地あり」と回答した割合は23%でした。米国では、57%が高成熟度の2段階に該当し、17%が低成熟度の2段階に該当するとされています。グローバル全体では、57%が高2段階、18%が低2段階に該当しています。

日本における最も一般的なコンプライアンス問題は「プライバシー/サイバーセキュリティ侵害」

過去の調査結果と同様に、データプライバシーやサイバーセキュリティの侵害は、過去3年間に組織が経験したコンプライアンス上の問題として、回答者が最も多く挙げた項目でした。それでも、このデータは同地域内の他組織と比較しての自組織の立ち位置を把握するのに役立つことでしょう。

例えば、日本の組織では、回答者の20%が過去3年間にコンプライアンス問題に関する否定的なメディア報道を経験したと回答しました。これは米国米国の13%、グローバルの14%と比較して高い数値です。また、自組織がコンプライアンス問題を一切経験していないと回答したのは44%で、これは米国の37%、グローバルの35%を上回っています。

他地域と同様に、日本でもコンプライアンス調査プログラムの大半は中央管理型である

グローバルでは、回答者の67%が「日常的なコンプライアンス調査プログラムにおいて中央管理型のアプローチを採用している」と回答しました。日本拠点の組織でも同様の傾向が見られ、58%が中央管理型アプローチを採用していると回答しています。ただし、この割合はグローバルだけでなく米国(68%)と比べても低い水準です。

日本企業の取締役会はグローバルと比べてコンプライアンスに関する直接的な経験に富む

取締役会がコンプライアンスに関与している組織ほど、R&Cにおいてより効果的かつレジリエント(回復力がある)であることは理にかなっています。 

日本拠点の組織については、「倫理・コンプライアンスに精通している人」のうち55%が、「自社の取締役会にコンプライアンス経験を有するメンバーがいる」と回答しました。これは、米国の39%、グローバルの43%と比較して高い数値です。また、「取締役会がリスクの特定および管理に対する監督責任を担っている」と回答した割合は、日本が45%、米国が33%、グローバルでも33%でした。

日本企業の3分の1以上でAIの活用に関する意思決定にコンプライアンス部門が「積極的に関与している」 と回答

人工知能(AI)が様々な組織で進化する役割を果たす中、その導入におけるコンプライアンス部門の役割も変容しています。

日本拠点の組織では、回答者の36%がコンプライアンス部門がAIの利用に「積極的に関与している」と回答し、米国では35%、グローバルでは33%が同様の回答をしています。一方で、「コンプライアンス部門が関与していない」と回答した割合は、日本では12%であり、これは米国およびグローバルの割合と一致しています。

日本拠点の組織のわずか50%しかホットラインを設置していないと回答

NAVEXの調査データは、内部通報ホットラインを設置していると回答した組織の割合が、グローバル全体で依然として低水準であることを示しています。匿名で、または報復を恐れずに不正行為を報告できる仕組みは、あらゆるコンプライアンスプログラムの中核的要素であるにもかかわらず、このような結果が出たことは憂慮すべきです。

日本拠点の組織については、倫理・コンプライアンスに精通している回答者の50%が、自組織にホットラインまたは内部通報者用の内部報告チャネルが設置されていると回答しました。これは、米国の58%、グローバルの53%と比較して低い数値です。

報復防止ポリシーの欠如も注目すべき点です。日本の組織では、こうしたポリシーを有しているとされた割合は29%でした。米国では60%、グローバルでは49%でした。

結論

日本拠点の組織における倫理とコンプライアンスの文化は進化を続けています。本ホワイトペーパーの情報から、これらの組織が同業他社と比較してどのような位置にあるかを理解するための追加的な文脈が読み取れると思います。

調査結果によると、日本拠点の組織には、取締役会にコンプライアンス経験を有するメンバーがいると回答した割合が高いなど、いくつかの点で強みがあることがわかります。一方で、内部通報者用ホットラインを設置している組織が半数に留まるなど、改善の余地がある分野も存在します。読者の皆様には、これらの調査結果を社内での議論のきっかけとし、プログラムの改善に向けた支援を求める機会として活用されることをお勧めします。

執筆者プロフィール

Copied!