
アジア太平洋地域において、透明性、倫理性、コーポレートガバナンスを強化するために、内部通報の重要性に対する 認識が増加しています。内部通報プログラムを導入する組織はますます増加しています。
日本のようなアジアの一部の国々では、過去 25 年に渡って保護法が整備されてきました。公益通報者保護法は 2004 年に制定され、2022 年に改正されました。これは、内部通報者の保護を強化し、企業コンプライアンスを促進するこ とを目的としています。
近年の法の改正により、企業の内部通報の評価と行動に変化がもたらされたでしょうか?堅固な内部通報プログラム を備えた組織は、従業員やサプライチェーン内で発生するリスクおよび文化的健康を理解するために、リアルタイムの インテリジェンスを有しています。本レポートを読み、これらの指標を自社の組織運営と比較することを推奨します。

方法
APACとは、アジアおよび太平洋の諸国と市場を含む地域であるアジア太平洋を表します。
統計上の正確性のため、分析には 2024 年に 10 件以上の通報を受けた組織のみが含まれています。全体的な通報データを歪める可能性のあ る外れ値の影響を排除するため、各ベンチマーク指標を組織別に算出し、その後、全体における中央値 (中間点) を特定しています。
NAVEX の 2025 年度地域別の内部通報およびインシデント管理ベンチマークレポートでは、4 つのグローバル地域における 10 の異なるベンチ マーク指標を詳しく分析しています。ほとんどの指標は、本社地域および通報があった地域別に示されています。
主要な調査結果
すべての指標は中央通報値 (MRV) を反映しています。
- 0.78
APAC
- 1.75
北アメリカ
- 1.57
グローバル

100 人の従業員あたりの通報件数ベンチマーク指標は、組織の規模に関係なく、すべての通報チャネルにおける一意のコンタクト総数の比較 を可能にしています。
APAC を基盤とする組織では、2024 年の 100 人の従業員あたりの通報件数の中央値は 0.78 でした。対して、北アメリカを基盤とする組織の 100 人の従業員あたりの通報件数の中央値は 1.75 でした。グローバルでは 100 人の従業員あたりの通報件数の中央値は 1.57 でした。
算出方法:すべての通報チャネルによって収集されたすべての通報を反映する数値を組織の従業員数で割り、100を掛けます。 算出された指標を弊社が提供する計算と正確に比較するためには、組織はどの通報も除外しないようにする必要があります。
匿名通報率
報告値の中央値
- 67%
APAC
- 52%
北アメリカ
- 54%
グローバル

匿名通報率ベンチマーク指標は、身元を明らかにしないことを選択した通報者により提出されたすべての通報の割合を示します。
APAC に基盤を置く組織の 2024 年の匿名通報率は 67% でした。北アメリカの匿名通報率は 52% でした。グローバルでの中央値は 54% でし た。
**算出方法:**匿名通報の割合を算出するには、匿名通報者により提出された通報件数を、受け取った匿名および記名通報の総数で割
立証率
報告値の中央値、終結したケース
- 48%
APAC
- 45%
北アメリカ
- 46%
グローバル

全体的な立証率は、記名通報者と匿名通報者の両方からの、立証された、または部分的に立証 されたとして終結した申し立ての中央値を反映します。立証率の高さは、質の高い通報を行う十 分な情報を持つ従業員基盤と、効率的な調査プロセスを反映します。
APAC を拠点とする組織では、終結したケースの中央値 48% が立証されたケースとして記録 されました。北アメリカでは、同様の中央値は 45% となっています。グローバルでは 46% でし た。
算出方法: 立証された、または部分的に立証されたとして終結した申し立て通報件数を、定義どおりに立証された/部分的に立証された、または立証されなかったとして終結した通報総数で割ります。また、これらの計算から除外されている、「情報不十分」として記述されたカテゴリがあることも留意してください。
上位の通報リスクカテゴリ

通報リスクカテゴリでは、不正行為を「会計、監査および財務報告」、「ビジネスインテグリティ」、「職場での行為」、「環境、安全衛生」、 「資産の不正使用または横領」、「その他」の 6 つの明確なカテゴリに分類しています。6 つのリスクカテゴリは、合計 24 のリスクタイプに 細分されます。さらに詳しいガイダンスについては、弊社の「地域別の内部通報およびインシデント管理ベンチマークレポート」をダウンロ ードしてお読みください。
リスクカテゴリは広い解釈が可能です。本レポートを読む際には、これらの指標を自社の組織運営およびプログラムと比較することを推奨 します。
**算出方法:**まず、通報が 6 つのリスクカテゴリのいずれかに分類されることを確認します。6 つのカテゴリにおける各カテゴリ内の 通報件数を通報の総数で割ります。ここでは、各カテゴリの中央値が使用されていることにご注意ください。合計は必ずしも100%になりません。
通報リスクカテゴリは、以下のとおりに定義されます。
(以前の名称「人事、多様性および職場での尊重」) は、従業員の関係性または不正行為に関係することが多い通報です。リスク タイプには、差別、ハラスメント、職場における礼儀正しさ、報復、報酬と福利厚生、薬物乱用、全般、またはその他の人事があります。
ビジネスインテグリティは、組織と第三者、データ、法律、規則、患者または顧客とのやり取りに関する通報です。
会計、監査および財務報告は、組織内のこれらの機能に関する通報です (例: 財務上の不正行為、内部統制、監査)。
結論
ベンチマークデータには「正しい」結果はないことを常に認識することが重要です。各組織には独自の運営環境と文化があります。しかしなが ら、私たちはこれらの指標が、改善を求める組織にとって有益な情報となり、通報者は報復を恐れることなく不正行為に関する懸念を表明し、 倫理とコンプライアンスの文化の基礎を築くために役立つことを願っています。組織はこの情報を利用して、現地、地域、グローバルの同業他 社と自社を比較評価し、プログラムを発展させる方法について考えることができます。