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日本企業における AI の活用について、新たな調査データが明らかにしたこと

日本の職場における AI の導入は、もはや将来のトレンドではなく、すでに進行中です。しかし、従業員が日常業務に AI を取り入れ始めている一方で、責任ある利用を支えるために必要なガバナンスは、そのペースに追いつくのに苦労しています。

日本のビジネス プロフェッショナル 500 名を対象とした NAVEX の新たな調査によると、新たな乖離が明らかになりました。従業員の 40% 以上がすでに業務で AI を利用しているにもかかわらず、3 分の 2 近くが「正式なAI研修を受けたことがない」と回答しています。70 %近くが、AI 利用ガイドラインが提供されていない、あるいはその存在自体を知らないと回答しており、4 分の 3 近くが、承認プロセスが存在しないか、不明確であると答えています。

これらの調査結果を総合すると、組織は AI を導入しつつも、それを支えるために必要なガバナンスの枠組みをまだ構築している最中であることが浮き彫りになっています。

また、この調査では、管理職と現場の従業員との間に重要な隔たりがあることも明らかになりました。管理職は AI をより迅速に導入しており、進行中のガバナンスの取り組みについてもより認識していますが、管理職以外の従業員は、指針や承認プロセスが存在するかどうかさえ把握している可能性が著しく低いのです。この認識のギャップは、AI ガバナンスが単にポリシーを作成することではなく、日々 AI を使用することが期待される従業員に確実にその情報を届けることにあることを示唆しています。

  1. AI の導入では、管理職が非管理職をリード

従業員の 10 人に 4 人が AI を利用しており、管理職が非管理職を導入率で上回る

職場での AI 利用について、「利用している」 と回答した人の合計割合は 43% でした。これには、「毎日利用している」(11%)、「週に数回利用している」(20%)、「月に数回利用している」(12%)が含まれます。これは、「めったに利用しない」(21.6%)や「全く利用しない」(35.4%)を含め、利用しないと回答した人の合計である 57% を下回る結果となりました。

管理職のうち、半数以上となる 59.4%が職場で AI を利用していると回答しました。内訳は、「毎日利用している」(16.7%)、「週に数回利用している」(28.7%)、「月に数回利用している」(14%)となっています。これは、非管理職(36%)に比べて大幅に高い数値です。この結果から、AI の利用は全体としては依然として限定的であるものの、管理職の間では普及が進んでいることがわかります。

  1. AI 導入のペースに比してトレーニングは立ち遅れ気味

AI 研修への参加率は 20%以下、AIの利用増加にトレーニングが追い付いていない懸念

AI の安全な利用に関する研修の受講状況については、「専門的な研修を受けた」(2.6%)「社内の簡単な指導を受けた」(13.6%)と回答した人の合計割合は 16.2% でした。これは、「研修を受けていない」と回答した人(65.2%)をはるかに下回る数値です。

管理職においては、「専門的な研修を受けた」(5.3%)と「社内の簡単なガイダンスを受けた」(19.3%)を合わせた割合は 24.6%で、非管理職の従業員(合計12.5%)のほぼ 2 倍となっています。一般社員のうち、70.3%が「研修を受けていない」と回答しており、AI の利用に関する教育が現場に十分に浸透していないことが示唆されています。

研修が不十分な場合、従業員は 「何がリスクにあたるのか」「どのような利用が適切なのか」 を判断するにあたり、自らの判断に頼らざるを得ません。後述する承認フローの不明確さと相まって、AI の自己判断による利用がより起こりやすくなる構造が生まれつつあることが懸念されます。

なお、この質問は複数回答形式であり、合計が 100% を超える場合があります。

  1. AI のアウトプットには、人間による確認が必要となる

30% 以上が AI のアウトプットを 「めったに、あるいはまったく確認しない」 と回答、倫理的なチェックの不十分さが浮き彫りに

業務で AI 生成の出力を利用する際の倫理的妥当性の検証について、「常に検証する」(22%)、「多くの場合検証する」(21.4%)、または「一部のみ検証する」(22.9%)と回答した人の合計は66.3%に上りました。一方で、回答者の 3 分の1は、「めったに確認しない」(21.7%)または 「全く確認しない」(12.1%)と回答しました。

AI の利用が進む中、確認の徹底度にばらつきが見られ、多くの日本企業において、AI の安全な利用に関する明確な方針、ガイドライン、トレーニングが欠如していることが示唆されています。

  1. AI リスクに対する自己過信が、従業員全体にわたって問題となる可能性

過半数が研修を未受講も、ほぼ半数が AI の利用に伴うリスクを 「理解している」 と回答。リスクに対する自身の理解について過信の可能性

情報漏洩や誤情報の拡散など、AI の利用に伴うリスクの理解については、46.2%が 「理解している」と回答しており (「十分に理解している」(10.8%)と「ある程度理解している」(35.4%)、ほぼ半数がリスクを理解していると自認していることが示されています。特に管理職は、「十分に理解している」(14.0%)または「ある程度理解している」(48.7%)と回答した割合が合計で 62.7%に達し、非管理職の従業員(合計39.1%)よりも有意に高くなっています。

この結果は、第 2 問で確認された研修参加率(合計 16.2%;管理職 24.6%、非管理職 12.5%)とは乖離しており、一部の従業員がリスクを理解していると単に信じているだけで AI を利用している可能性が示唆されます。非管理職の従業員では、過半数が十分な理解を欠いており、教育機会の不足や個人的な判断に基づく過信が、現場レベルでのリスク管理を弱めている可能性があります。

一方、53.8% (「あまり理解していない」(31.8%)「全く理解していない」(22.0%)) の参加者が回答しており、リスクを理解していないことを自覚している層も少なくないことがわかります。

自己評価による理解度と専門的な教育との間のギャップは、管理職と非管理職の双方においてリスク判断の精度を低下させ、後述する 「シャドー AI」 のリスクを増幅させる可能性があります。

  1. 「シャドー AI 」 の利用は、管理職の間でより一般的

会社の許可を得ずに自己判断で AI を利用する 「シャドー AI」 の経験は、管理職(36.7%)が非管理職(15.8%)を大幅に上回る

勤務先の許可なく AI を使用した経験については、「常に」(3.6%)、「頻繁に」(5.8%)、「時折」(12.6%)と回答した人の合計が 22% でした。特に管理職の回答では、「常に」(6%)、「頻繁に」(8%)、「時折」(22.7%)という結果となりました。管理職は非管理職(合計15.8%)と比較して、許可なく AI を利用する頻度がきわめて高い(36.7%)ことがわかります。

正式な承認なしに AI を使用することは、意図せずして企業をより広範なリスクにさらす可能性があり、これは AI ガバナンスにおける死角といえます。さらに、管理職以外の従業員は規則に従う傾向が強いものの、前の質問で示された 「理解不足」 と組み合わせると、この結果は、従業員が 「理解が浅いことを理由に AI の使用を避ける層」 と、「理解が浅いにもかかわらず独自の判断で AI を使用する層」 の二極化が進んでいる可能性を示唆しています。

  1. リスク管理の不備によって生じる機会損失は限定的との見解

リスク管理やコンプライアンスの不備によって実際に生じた機会損失は依然として限定的ながら、特に管理職の間では 10% 以上が潜在的なリスクを認識

回答者の一部は、リスク管理やコンプライアンスの不備により、顧客の獲得、契約、投資、提携の機会を逃したといった事例を報告しています。「実際に複数回あった」(1.2%)または 「実際に 1 回ほどあった」(2.4%)と回答した割合を合わせると、3.6% となります。「実際に起きたことはないが、機会を逃すリスクがあると感じたことがある」 と答えた人(9.6%)を含めると、その割合は 13.2% に達しました。

しかし、全体としては回答者の 64.2% がこの問題を経験しておらず、日本の従業員は自組織の倫理的実践に対して高い信頼を寄せていることがうかがえます。

管理職に限ると、「実際に複数回あった」(3.3%)、「実際に 1 回程度あった」(5.3%)、「そのリスクを感じたことがある」(16.7%)の合計割合は 25.3% となり、非管理職の従業員(合計8%)よりもはるかに高くなっています。

  1. AI に関するガイダンスは現場まで届いていない

3 分の 2 以上が、AI の利用ガイドラインは 「提供されていない」 または 「不明」 と回答、現場への浸透が不十分であることが明らかに

AI ツールを安全かつ責任を持って利用するためのガイドラインについて、ガイドラインの存在を認識していた回答者の合計割合はわずか 32.8% にとどまりました。内訳としては 「ガイドラインが存在し、非常に理解しやすい」(11.8%)、「ガイドラインは存在するが、あまり理解しやすいとは言えない」(12.6%)、「ガイドラインは存在するが、全く理解しやすいとは言えない」(8.4%)という区分となりました。

一方、「ガイドラインは提供されていない」(37%)または 「ガイドラインが存在するかどうかは分からない」(30.2%)と答えた人の合計割合は、67.2% に達しました。

管理職に限ると、「ガイドラインが存在し、非常に分かりやすい」(12.7%)、「ガイドラインは存在するが、あまり分かりやすいとは言えない」(15.3%)、「ガイドラインは存在するが、全く分かりやすいとは言えない」(12.7%)の合計割合は 40.7% となり、非管理職の従業員(合計29.4%)を上回りました。この結果は、管理職はガイドラインの存在をより認識している一方で、現場レベルにおけるガバナンスが効いていない可能性があることを浮き彫りにしています。

  1. AI の承認プロセスは不明確であるか、そもそも知られていないことが多い

回答者のほぼ 4 分の 3 が、AI に関する承認または確認プロセスが存在しないか、あるいは不明であると回答

回答者のほぼ 4 分の 3(72%)が、AI 利用に関する承認または確認プロセスについて、「確立されていない」(41.6%)または「わからない」(30.4%)と回答しました。こうしたプロセスが 「明確に確立され、運用されている」(10.2%)、「確立されているが十分に運用されていない」(6.8%)、「現在策定中である」(11%)と回答した回答者の合計割合は 28% でした。

管理職に限ると、「明確に確立され運用されている」(12.7%)、「確立されているが十分に運用されていない」(8%)、「現在策定中」(18.7%)の合計は 39.4% でしたが、非管理職の従業員では 23.1% にとどまりました。管理職はこうしたプロセスの存在を認識している傾向が強い一方で、この結果は、一般社員との間で情報が十分に共有されていない構造も浮き彫りにしています。これは、前の質問で示されたガイドラインに対する認識の低さとも一致しています。

職場での AI 活用が進んでも、承認の流れが不明確なままでは、「シャドー AI」などのリスクにつながりかねません。この調査結果は、日本の組織において管理・確認体制に遅れが生じている可能性を示唆しています。

  1. AI への投資の多くは依然として事後対応的にとどまる

AI への投資や活用に対し 「積極的」 と捉えている企業は 30%未満、企業の慎重さを示すか

顧客のニーズに対応するための AI への投資および活用については、「積極的に推進している」(8.2%)、「すでに推進しているが不十分」(7.8%)、「現在検討または準備中」(12.2%)という肯定的な姿勢を示した回答者の合計割合は 28.2% でした。

管理職に限ると、「積極的に推進している」(9.3%)、「すでに推進しているが不十分」(10%)、「現在検討または準備中」(20.7%)の合計割合は 40% となり、非管理職の合計割合(23.2%)を上回りました。 「わからない」 との回答は、管理職以外の従業員の間で 40.0% と著しく高くなりました。

この傾向は、前述の 「ガイドラインに対する認識の欠如」 や 「承認プロセスの未整備」 とも関連し、透明性が欠けている可能性があること、AI への投資とガバナンスの両方に対し、依然として慎重な姿勢をとっていることを示唆しています。

  1. 早期のリスク特定に対する信頼が欠如している可能性

組織内で発生している不正行為や新たなリスクの早期兆候を、事態が深刻化する前に見抜ける自信があるという回答は 20% 未満にとどまる

組織内で発生している不正行為や新たなリスクの早期兆候を、事態が深刻化する前に見抜ける自信について、「非常に自信がある」(1.4%)「ある程度自信がある」(14.8%)を合わせた割合は、わずか 16.2% にとどまりました。

管理職においては、「非常に自信がある」(2%)と「ある程度自信がある」(25.3%)を合わせた割合が 27.3% となり、非管理職の従業員(11.4%)よりも著しく高くなりました。一方、管理職以外の従業員では、「わからない」 が 43.4% と最も高い割合を占めており、不正行為やリスクを見抜く方法に関する適切なトレーニングや意識が不足していることが示唆されています。

Blue and yellow glowing lines resembling fiber optic cables curve and intersect on a dark background, symbolizing data transmission or network connectivity.

おわりに

本調査の結果は、日本の企業が AI 導入の新たな段階に入っていることを示唆しています。それは、ガバナンスが技術そのものと同じくらい重要になりつつある段階です。従業員は日々の業務で AI を活用し始めていますが、多くの企業では、AI の責任ある利用を支えるために必要な方針の策定、研修、監督体制の整備がまだ進行中の段階にあります。

また、本調査は経営幹部にとって重要な課題も浮き彫りにしています。それは、ガバナンスに関する取り組みが、AI の利用が期待される従業員に必ずしも届いていないという点です。このギャップを埋めるには、ガイドラインを作成するだけでは不十分です。組織には、明確なコミュニケーション、実践的な教育、そして一貫したプロセスが必要であり、それによって従業員がAI を責任を持って活用する自信を持てるようにすると同時に、組織的なリスクを低減する必要があります。

AI が職場に定着していく中で、成功を収めるのは、イノベーションとガバナンスのバランスを適切にとることができる組織です。つまり、従業員が AI のメリットを実感できるようにしつつ、信頼、説明責任、コンプライアンスの文化を築き上げることができる組織です。