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ケース管理とインシデント管理:その違いとは

リスク・コンプライアンス部門では、「ケース」と「インシデント」という用語が同じ報告・解決プロセスの中で扱われるため、併せて使用されることがよくあります。強固なワークフローを構築するには、初期対応における判断と、その後に続く包括的なケース記録の双方をサポートできる必要があります。 

ケース管理とインシデント管理の関係は、入れ子構造として捉えることができます。

  • **インシデント管理:**報告された事象に対する初動対応を扱うものであり、受付、振り分け、エスカレーションなど、インシデントや申立てへの対応を含みます。 
  • ケース管理:調査、意思決定の記録、対応アクションの割り当て、関連ケースの紐づけ、最終的な解決(クローズ)までを含む、課題の管理および解決のためのより広範な構成から成ります。

本記事では、リスク・コンプライアンス部門がインシデント管理とケース管理の違いをどのように理解すべきか、またインシデント対応がより広範なケース管理ライフサイクルの中でどのように位置づけられるかについて解説します。なお、両者の違いは、ケース管理プロセス全体を確認することで最も明確に理解できます。

この違いを理解することが重要な理由

内部通報およびケース管理プログラムを構築または高度化する企業には、通報対応、調査、フォローアップのための明確なワークフローが求められます。インシデント管理とケース管理の違いを理解することで、通報件数が増え、対応が複雑化する中でも、適切なプロセスおよびソフトウェアを選択できるようになります。

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ケース管理とは

ケース管理とは、職場での行動に関する事案を追跡、調査、記録し、解決するために用いるプロセスおよびシステムを指します。ケースの始まり(オープン)は、インシデント報告、ポリシーに関する問い合わせ、従業員関係の問題、その他さまざまな相談をきっかけとする場合がありますが、それが何であろうとすべてのケースにおいて記録と対応が必要となります。

NAVEX Oneのソフトウェアにおいて、「ケース管理」とは、全体的にチームが従うワークフローそのものと、その業務を大規模に運用するための中核的な調査ツールの両方を意味します。専用のケース管理システムを導入することで、業務が拡大してもケースファイルを適切に統制することが可能になります。 

多くの組織が、報告された懸念事項への対応を改善するために専用のケース管理ソフトウェアを導入していますが、近年では、さらなる最適化を求めて、 AIツールを活用してケース管理を高度化する 取り組みも進んでいます。

ケース管理プロセスの進め方

「職場におけるインシデント管理プロセス」は、ケースの初動対応フェーズを指し、通常はインシデントや申立てが報告された時点で始まります。このプロセスには、通報者との最初のやり取りや、報告内容を初期対応として処理していく一連の流れが含まれます。その後、ケースはこの段階で解決してクローズされるか、またはケース管理のもとでの構造化されたケースワークへと移行します。 

現在のワークフローの状態を確認する際には、 こちらの インシデント管理プログラムの健全性チェック (英語のみ)で確認すべきポイントを整理できます。 

1. 検知および報告

ホットライン、ヘルプライン、ウェブフォーム、対面報告などの報告チャネルを通じて懸念事項が提起されます。ここでの主な目的は、提出された内容を正確に把握し、原本の詳細情報を保持することです。

2. 記録および文書化

チャネル間で情報が失われないよう、一貫したケース記録を作成します。報告内容、関係者、受付時点で把握できる即時的なリスク兆候を含めます。(例:不正行為に関するインシデント報告や、従業員からの具体的な問い合わせに文書上の明確な回答が存在しない場合など) 

3. トリアージおよびエスカレーション

緊急度、重大性、リスクエクスポージャーを評価し、通報者に対して受領した旨を通知します。その後、適切な担当者へ案件を振り分けます。安全性、レピュテーションリスク、財務リスクが高いケースについては、即時にエスカレーションを行います。また、時間的制約のある対応義務がある場合には、関与すべき関係者が変わる可能性がある点にも留意します。 

4. 調査および対応

人員の保護や情報の保全のために必要な初動対応を実施します。その上で、正式な調査が必要かどうかを判断し、より詳細な証拠対応や事実認定が求められる場合には、ケース管理プロセスへ移行します。

5.  解決およびクローズ

懸念事項が完全に解消され、意思決定の内容が記録され、必要な対応がすべて実施された段階でケースをクローズします。  

6. ポストインシデントレビュー

インシデント管理およびケース管理のプロセス全体におけるケースの流れを振り返ります。その傾向をもとに、分類、エスカレーションルール、文書化の基準を継続的に改善します。

インシデント管理とは

内部通報およびホットラインの文脈において、インシデント管理とは、報告された事象や申立てに対する初動対応を指すものとされることが一般的です。これは、懸念事項をどのように受け付け、一貫性をもって記録し、緊急性を識別し、初期判断が行われる中で高い可視性を保ちながらエスカレーションまたは適切な担当者へ振り分けるかといった一連の対応を含みます。

インシデント報告の受付およびエスカレーションに関するベストプラクティスについてさらに詳しく知りたい場合は、こちらから インシデント管理のための完全ガイドをご覧ください。

主な違いとベストプラクティス

本質的には、すべてのケースがインシデントであるわけではありませんが、すべてのインシデントは対応すべきケースの一種です。また、1つのケースに複数のインシデントや複数の個人からの通報が含まれる場合もあります。ケース管理とインシデント管理の違いにおいては、通報が初動対応の段階を超えて継続的な対応へと移行する際に、その違いが徐々に明確になってきます。

以下の表では、インシデント管理とケース管理がそれぞれ達成すべき事項を比較し、ケース管理ライフサイクルの各段階を一貫性のある形で運用するためのベストプラクティスを示しています。

項目インシデント管理ケース管理
ケースライフサイクルにおける位置づけ主に受付や初動対応(振り分け・トリアージなど)を担当ケース全体の対応(記録、調査、関連付け、クローズまで)を担う
コンプライアンス担当者が考えるポイント「何が報告されたのか?どのくらい緊急か?誰にすぐ共有すべきか?」「実際に何が起きたのか?どんな証拠があるのか?どう対応すれば解決できるか?」
アクセスおよび機密性報告内容の確認と次の対応を判断するために必要な関係者に限定権限をしっかり管理し、許可された関係者のみが段階に応じてアクセス
主な業務内容報告の受領、通報者への初期対応(匿名含む)、情報の整理、重要度の判断、必要に応じたエスカレーション対応方針の検討、証拠収集、調査結果の記録、フォローアップの実施、最終的なクローズ
通報によって得られる情報インシデント件数、対応スピード、初期段階のリスク傾向ケース全体の傾向、再発状況、経営層への報告に役立つ結果、ポリシーやトレーニング改善につながる示唆
望ましい状態報告が正確に受け付けられ、速やかに確認・引き継ぎされる。通報者にも適切に返信されるケースの経緯が一元管理され、判断内容が分かりやすく記録され、フォローアップも漏れなく実施される
起こりがちな課題報告が滞留する、受付時に内容が正しく把握されない、引き継ぎが不透明、通報者への対応不足で信頼が低下する情報や証拠が分散する、管理方法が統一されていないためミスが発生する、プロセスが見えにくく改善が進まない

ケース管理とインシデント管理:重要なポイント

ケース管理とは、受付から調査、最終的な解決に至るまで、事案を一貫して管理・解決するための全体プロセスを指します。一方、インシデント管理はそのプロセスの一部であり、特定の問い合わせ、報告された事象、または申立てに対する対応(特に初動対応)に焦点を当てたものです。また、1つのケースには、複数のインシデントが含まれる場合があり、さらに問い合わせやポリシーに関する質問など、さまざまな要素が含まれることもあります。

インシデント管理およびケース管理の担当者

組織によっては、同一のチームがインシデント報告の受付とケース管理の両方を担当する場合があります。一方で、ケースの種類に応じて担当部門が異なる場合もあり、例えばコンプライアンス部門、法務部門、人事部門(従業員対応部門)などが担当することがあります。 

また、報告受付、ケース管理、内部通報の調査について、社内部門と信頼できる第三者との間で役割を分担している組織も多くあります。

ケース管理・インシデント管理ソフトウェアの活用で実現すること:

  • 受付から対応まで、ケースをスムーズに移行させる
  • 内部通報者や第三者の通報者に迅速に対応する 
  • ケース担当者が着手前に、対応の方向性を明確に把握できるようにする 
  • プロセスおよび個別ケースの状況に応じて、然るべき関係者のみに情報を共有する 
  • すべてのケースを一元管理し、プログラムの健全性および監査対応の透明性を確保する

受付と調査には異なるワークフローが必要

受付と調査で異なるワークフローが必要となりますが、その理由は、同一のケースであっても、段階によって求められる統制が異なるためです。受付段階では、迅速なトリアージと高い可視性を重視し、インシデントや申立ての内容を速やかに評価し、事実関係の裏付けを取りながら、リスクが高い場合には適切にエスカレーションできる状態が求められます。

その後、ケースが進展するにつれて、重点は対応内容や意思決定を監査のために追跡可能な形で記録することへと移っていきます。インシデント報告、ポリシーに関する問い合わせ、外部からの照会など、きっかけが何であったかに関わらず、時間をかけて文書化された形で解決へ導くことを支援するようにケースを管理します。

組織に必要なケース管理機能

ここまでに述べたインシデント管理のステップは、報告された問題を受け付け、初動対応まで進めるためのものです。一方で、ケース管理は、初動対応後の業務を整理し、継続的に管理する役割を担います。

ケース管理ツールを検討されている場合、ケースが進行し、内容が変化し、複数のチームにまたがっても、業務を適切に統制できるかどうかに着目してください。機密性を保護し、記録の説明責任を担保し、一貫した形での解決を促進する機能が備わっていることが重要です。 

記録と証拠をセキュアに管理

保護された暗号化ストレージや、変更履歴(誰が・いつ・何を変更したか)を確認できる監査証跡があるかを確認します。ケースファイルには、メモや添付資料が整理された状態で格納され、外部フォルダや個人のドライブに依存しないことが重要です。

ロールベースのアクセス管理と権限設定

アクセス権限は、必要な情報のみを必要な人しか閲覧できないよう細かく設定できなければなりません。特に、法務・人事・コンプライアンス部門が同一システムでケースを扱う場合や、調査担当者が自身に割り当てられたケースのみ閲覧できるようにするために重要です。

多様な報告タイプへの対応

社内外のさまざまな報告元から寄せられる、種類の異なる報告を、システム内で一元管理できることが求められます。例えば、コンプライアンス関連案件や従業員対応の問題、第三者からの通報など、たとえワークフローが異なる場合でも同一システム上で管理できることが理想です。

ワークフロー自動化と振り分け

ケースの進行段階、対応内容、エスカレーションの流れは、各組織の運用に合わせて柔軟に設定できる必要があります。また、重要な引き継ぎや対応内容が追加作業なしにケース履歴として自動的にプラットフォーム上に記録されることも重要です。

レポーティングと分析

個別のケースだけでなく、全体像を把握できることも重要です。件数、リスクカテゴリー、対応期間、最終結果、再発傾向などの主要指標を、手作業でのデータ整理に頼らず把握できるレポーティング機能が求められます。

部門間の連携

関係者間の連携が、ケース記録の中で適切に管理されながら行われるべきです。コメント、タスク、レビューなどの機能により、必要な連携を保ちつつ、すべての関係者に情報を開示しすぎない仕組みが必要です。

通報チャネルの統合

通報チャネルをケース管理に直接連携させることで、受付時の情報をそのまま引き継ぐことが可能になります。これにより、情報の再入力の手間を省き、ケースクローズまで初期報告の文脈を維持できます。

データプライバシーと規制遵守

ケース管理システムは、調査プロセス全体を通じて機微情報を保護できるものである必要があります。ロールベースの可視性、データ保持期間の管理、機密情報へのアクセス制御など、プライバシーおよび規制要件に対応した機能の有無が鍵になります。また、GDPRなどのデータ保護規制に基づき、報告内容やケース記録、エクスポートデータから個人識別情報(PII)をマスキングまたは削除できる機能も求められます。

ケース管理で悩んでいるなら

ケース管理ソフトウェアを利用することで、ケース対応を一貫性があり、追跡可能で、監査に耐えうる形で管理できるようになります。これで、判断や対応内容がメールでの個別のやり取りなどに分散することがなくなり、従業員や第三者に匿名で通報できる専用の窓口を提供するため、案件が単純なものであっても、機微な内容であっても、明確な記録を残しながらケースを管理・解決することが可能になります。

適切なケース管理ツールを導入することで手に入るメリットは次のようになります。

  • あらゆる種類の報告を一か所で受け付ける
  • メモ、証拠、通報者とのやり取り、判断内容を、1つのケース記録にまとめて保持する 
  • ケースの種類が異なっても、一貫したワークフローで対応を標準化する  
  • データ保護要件を満たすため、機微な情報へのアクセスを権限のある関係者のみに限定する 
  • 対応内容を割り当てて進捗を管理し、責任の所在と対応の継続性を確保する 
  • ケース件数、種類、対応期間、調査結果などを可視化し、適切なモニタリングを行う  
  • 何らかの形で関連するケース同士を紐づけて管理する 
  • クローズ後のケースも含めて一元的に管理する

信頼性の高いケース管理・インシデント管理を支えるNAVEXの仕組み

通報が届いても、その時点ではその内容がどのような案件に発展するかを正確に把握できるとは限りません。簡単な問い合わせであれば1時間ほどで解決する場合もあれば、数か月にわたる調査へと発展することもあります。NAVEX 2026年内部通報・インシデントベンチマークレポート では、合計で従業員数7,700万人を超える企業から過去最多となる237万件の報告が寄せられたことが示されており、対応すべき案件は確実に増え続けていますだからこそ必要なのは、「初動のスピード」と「長期対応の確実性」を両立できる仕組みです。 

NAVEX Oneは、インシデントの迅速なトリアージから、ケースの調査・記録・解決までを、1つのつながったワークフローで支えます。チームの運用に合わせた振り分けやエスカレーション、役割に応じた情報開示の制限、対応の割り当てと進捗管理を通じて、ケースがどの段階にあっても「今、何が行われているのか」を明確に保ちます。また、AIを活用した機能により、ケース記録の要約、トーンを統一した文章の下書き作成、報告・コミュニケーション・開示文書の翻訳といった定型業務を効率化できるほか、高度な分析やインサイトの提供も可能になります。これによって、更新内容の書き直しや形式調整にかかる時間、言語の違いによる対応遅延を削減できます。

NAVEX Oneなら、ケース記録が同一プラットフォーム上に集約されているため、インシデントおよびケースのデータを、NAVEX One内の他ソリューションやHRIS(人事情報システム))と連携させることも可能です。その結果、複数の場所から情報を集めることなく、リスク・コンプライアンス施策と人事対応を含めた全体像を一貫した文脈で把握することが可能になります。さらに、より高度な可視性が必要な場合には、 分析&ベンチマーク やレポートのカスタマイズ機能を追加することで、件数、対応期間、最終結果、再発傾向などを、社内の時系列データおよびグローバルな同業他社の傾向と比較しながら把握できます。

成長を続ける企業のための、エンドツーエンドのケース管理・インシデント管理ソリューションについては、 NAVEX One EthicsPoint Professionalのページをご覧ください。

ケース管理とインシデント管理に関するよくある質問

  • ケース管理システムとは何ですか?

    ケース管理システムとは、ケース記録を一元管理し、チームが意思決定を記録し、対応を割り当て、明確な履歴を残しながら課題をクローズできるようにするソフトウェアです。インシデント報告、問い合わせ、ポリシーに関する質問など、さまざまな形で寄せられるケースに対応できるほか、同じ背景や原因を持つ関連した複数のケースを管理することも可能です。優れたシステムであれば、ロール別アクセス権限も制御でき、ケースの対応状況のレポーティングも容易にします。

  • 1つのシステムで、インシデント管理とケース管理の両方を行えますか?

    はい、可能です。そのためには、インシデントをケースとは別のものとして分けて扱うのではなく、ケースの中の「事象の詳細」として扱う仕組みであることが重要です。このアプローチでは、ケースが一貫した作業単位として維持され、同一のケース内で、初動対応から継続的な対応までをシームレスに進めることができます。また、新たな報告が既存の状況と関連している場合には、関連するインシデント同士を紐づけて管理することも可能です。

  • インシデントとイベントの違いとは何ですか?

    イベント(event)とは、何かが発生した出来事を指し、必ずしもネガティブなものとは限りません。
    一方、インシデント(incident)とは、報告対象となるイベントのことで、例えば不正行為の報告や申立てなどが該当します。インシデントは記録され、ケース管理プロセスを通じて管理または調査が行われます。
    ケース(case)は、インシデントであるかどうかに関わらず、「何が起きたのか」を整理し、意思決定を文書化し、最終的に課題をクローズするために、チームが用いる管理の枠組みです。
    そのため、ケースにはインシデントだけでなく、問い合わせやポリシー変更の要請など、より中立的な内容が含まれることもあります。

  • インシデントは、どの時点でケースになりますか?

    多くのリスク管理・コンプライアンスプログラムでは、懸念事項が提起された時点で、その内容はケースとして扱われます。重要なのは、「インシデントからケースへ切り替わる」というよりも、同じケースの中で、初動対応から、より踏み込んだ文書化された解決対応へとフェーズが移っていくという考え方です。特に、追加の報告が寄せられたり、証拠の収集や対応アクションが必要になったりして、対応が時間をかけて継続する場合には、ケースとしての管理が不可欠になります。

  • 人事(HR)関連のインシデントとコンプライアンス関連のインシデントを、同じシステムで管理できますか?

    はい、可能であり、多くの場合その方が効果的です。日常的な人事上の苦情が、結果としてより広範なコンプライアンスリスクと重なることは少なくありません。これらを1つのシステムで管理することで、部門をまたいだ情報のつながりを把握し、データが分断されていると見逃してしまいがちな組織文化上の傾向や根本的な課題を可視化できます。重要なのは、厳格なアクセス制御を備えていることです。人事部門とコンプライアンス部門が同じシステムを利用する場合でも、それぞれが担当すべきケースのみにアクセスできるようにすることで、機密性を保ちながら安全に運用できます。

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